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覚えておきたい一文:
私は政治家に会うと、「日本農業の規模は世界で何位だと思うか」と聞くことにしている。ある大物政治家からは、「80位くらいではないか」との返答を得た。もっとも近い人でも50位。実際は先ほど述べたように世界5位の市場規模だ。そして農家の所得は世界6位である。つまり、一般国民のみならず、多くの政治家が、農水省の喧伝する自給率の低さや農業弱者論を鵜呑みにし、日本農業の真の強さを認識していないのだ。
日本、米国、英国、ドイツ、フランス5か国の農産物輸入額(2007年)を比べると、1位が米国の747億ドル、2位がドイツの703億ドル、次いで英国の535億ドル、日本460億ドル、フランス445億ドルという順となる。日本は世界最大の食料輸入国ではないのだ。
毎日のように連呼される「自給率41パーセント」は、カロリーベースの数字だ。これは国民一人一日当たりの国産供給カロリーを、一人一日当たりの全供給カロリーで割って算出する。<中略>ここで注意すべきは、分母となる供給カロリーは、我々が実際に摂取しているカロリーではないという点だ。厚生労働省の調査(2005年)による摂取カロリーは、1904キロカロリー。これに対して、流通に出回った食品の供給カロリーは2573キロカロリーもある。それでは、その差700キロカロリー弱、供給カロリーの4分の1以上はどこに消えたのか。それは毎日大量に処分されるコンビニ食品工場での廃棄分や、ファストフード店、ファミリーレストラン、一般家庭での食べ残しなどである。誰の胃袋にも納まらなかった食料、つまり誰にも供給されなかったカロリー分も、分母に入れて計算されているのだ。
国民が一般的に自給率と理解しているのは、「健康に生活するのに必要な食料が、身近な国産でどれだけ賄えているか」ではないか。そこで厚労省が定める健康に適正な「食事摂取カロリー」を基準に自給率を試算してみた。
年齢別・性別の適正基準に対し、その人口分布を厳密に当てはめてみると、国民一人一日当たりの平均カロリーは1809カロリーとなる。国産供給カロリー1012キロカロリーをそれで割ると、自給率は56パーセントにもなる。<中略>政府が定める2015年度目標の45パーセントを軽々と超え、民主党が10年度に目指す50パーセントさえ一気に突破している。
戸別所得補償モデル対策の対象農家数は、コメを例に挙げると180万戸ほど。そのうちの半数以上に当たる100万戸が1ヘクタール未満の農家で、農業所得は数万円からマイナス10万円程度である。これでは食べていけるはずがない。だからといって、「赤字農家が100万戸もある! 急いで補償しなければ!」という論は通じない。
なぜなら、彼らの総所得は平均で500万円前後あるからだ。彼らの多くは役所や農協、一般企業で働いている地方の農地持ちサラリーマンであり、総所得に占める農業所得の割合は1パーセント未満かマイナス。赤字農家というより、週末を利用してもっとも生産コストの高いコメや野菜を、自家用やおすそ分け用に耕作するのが趣味の疑似農家だ。
EUと民主党の補償制度はまったくの別物だ。
小麦を例に概略を説明しよう。EUでは、農地の面積当たりで計算して補償がなされ、1ヘクタール当たりの補償額は約5万円。20ヘクタールの農地を持つ農家でも、年間10万円程度の補償である。
<中略>
一方、民主党案では、補償は生産コストに対してなされる。日本で小麦を生産する際の平均的なコストは、1ヘクタールで約60万円だが、できた小麦は約6万円にしかならない。民主党はこの差額分、約54万円の赤字を丸々補償するというのである。たった1ヘクタールで、EUのおよそ11ヘクタール分に当たる54万円が補償されるのだから、労働量から比較してもEUより法外に厚遇なのが分かるだろう。
そもそも農水省は食料安保の概念を履き違えている。国際社会に共通する食料安保の考え方は、「国民が健康な生活を送るための最低限の栄養を備えているか」「貧困層が買える価格で供給できているか」「不慮の災害時でも食料を安全に供給できるか」の3点である。「将来、食料が足りなくなるかもしれない。どうしよう」という漠然とした不安を前提に議論をしている先進国は、日本だけだ。
ひとことコメント:
会社の同僚が、朝、フラッと席に立ち寄って「これ面白いっスヨ」と貸してくれた本(こういうの、すごく大切ですよね)。ドレドレと読んでみると、確かに自分がこれまで漠然と描いていた、日本農業の見方をガラリと変える力を持った本でした。なんとなく日本は自給率が低いから、将来食料が不足するかも……。農家も大変そうだから支援しないといけない思っていましたが(もちろん「努力している生産性の高い農家」は支援しないといけない)、農水省が自分たちの仕事を守るため、ずいぶん都合のいい情報をマスコミに流していることが分かりました。知識不足の部分だったので、勉強になった。
