ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆☆
覚えておきたい言葉:
ニューヨークに住む裕福な企業家が、コスタリカの海辺の町へ2週間の休暇を過ごしに出かけた。彼は現地に到着したその日に、地元の漁師から買った魚の、えもいわれぬ味わいにすっかり魅せられた。
翌日、波止場でふたたび漁師と出会ったが、その日の獲物はすでに全部売り切れていた。
どうやら漁師は、とびきり上等の魚が大量に獲れる穴場を知っているらしいが、一日に獲るのは5尾か6尾に決めているという。
なぜもっと熱心に働いてたくさんの魚を獲らないのかと、企業家は尋ねた。
「そうはいっても、だんなさん」と漁師は答えた。
「今の生活なら、毎朝9時か10時までのんびり寝てられるし、そのあとは子どもたちと遊んで、それから1、2時間ばかり漁に出ればいい。午後は1時間か2時間ほど昼寝して、夕方は早めに家族全員でゆっくり晩飯が食える。それで夜になったら村へ繰りだして、仲間とワインを飲みながら、ギターを弾いたり歌を唄ったりして、毎晩楽しく過ごせるんですよ。やりたいことをやって何不自由なく暮らしているのに、これ以上何が必要なんです?」
企業家はいった。
「もっと魚を獲りたまえ。そうすれば、きみの未来はバラ色だ。いいかね、わたしはニューヨークから来たビジネスマンだ。きみの人生が今よりもっとすばらしいものになるように手を貸してあげよう。何を隠そう、わたしはハーバードでMBAを取得した経歴の持ち主だ。ビジネスやマーケティングに関して知らないことは何ひとつない」
さらに調子に乗ってつづけた。
「バラ色の未来を実現させるには、まず、毎朝早起きをして夕方まで漁に励み、夕食後また漁に出ることだ。そうすれば、あっという間に金がたまって、もっと大型の船に買い換えることができる。2年もしたら、5、6隻漁船を所有して、仲間の漁師たちに賃貸しできるようになる。それから5年もすればきみのもとに集まる莫大な量の魚を加工するための工場を持てるようになるし、なんなら独自のプラントを立ち上げることだって可能だ」
漁師の困惑した表情を尻目に企業家は言葉を継いだ。
「さらに6、7年したら、ニューヨークでもサンフランシスコでも好きな都市に移り住んで自社製品の営業に専念し、工場は誰かに任せればいい。15年か20年もしっかり働けば、大富豪も夢じゃない。そうなったら、あとは死ぬまで1日だって働く必要はないんだぞ」
「そしたら、何をすればいいんです?」
裕福な企業家は熱い口調でいい切った。
「そしたらメキシコかどこかの小さな村に移り住むことができるよ。毎日のんびり朝寝を楽しみ、村の子どもたちと遊んで、午後はたっぷり昼寝して、ゆっくりと夕食をとって、夜は仲間とワインを飲みながら、ギターを弾いたり歌を唄ったりして、毎晩楽しく過ごせるじゃないか」
何もしないでいることを後ろめたく思ってはいけない。暇人は何の役にも立たないという考えは人々が心のなかに設けた枷のようなものだ。実際は、その反対である。暇人とは、嫌いなことをできるだけやらずにすませ自分が楽しめる活動に多くの時間をあてる人間のことだ。
かつて理想として思い描いていた充実した人生とはほど遠い毎日を送っているとしたら、その原因はあなたにある。
誰も、あわただしい毎日を強制してはいない。あなたが自分で選んだのだ。
つまり、肉体的な疲労も、精神のストレスも、すべてはあなた自身に責任がある。
すべては、世間並みでありたいという気持ちからきているのだ。人生にゆとりがなく恐慌をきたしそうだと感じているのはあなただけではない。みんなが同じような思いを抱いている。
たしかに、ひとりだけ違う行動をとるより、群れのあとをついて歩くほうが容易に見える。だが、群れのあとをついていくには、それなりの危険があることを承知しておいたほうがいい。
職業選択の際、世間の声に耳を貸してはいけない。
自分の内なる声に耳を澄まそう。
ここでの決断が、人生の満足度の3分の1を左右する。
高収入の仕事にしがみついていれば、家のローンを支払い、2台目の車を所有し、クリスマスには家族にぜいたくなプレゼントを贈り、リビングに大画面を置いて、夏休みには子どもたちをキャンプに参加させることも可能だ。
しかし、自分にしかできない力を活かして世の中に貢献するチャンスを犠牲にしてまでも、その種のぜいたくが本当に必要かどうか、もう一度考え直していただきだい。
自分にとって真に意味のある仕事をしないかぎり、人は本当に生きたとはいえない。
残念なことだが、死ぬ間際に自分の一生を振り返って深い悲しみに包まれる人は少なくない。最大の悔いは、夢を追求せずに終わったことだ。
(中略)
人類学者のアシュレイ・モンタギューがいみじくもいっている。
「人生の敗北をもっとも痛烈に思い知らされるのは、描いていた夢と現実との差を目にしたときだ」
いい替えれば、最後に悔やむのは、してきたことではなく、しないで終わったことなのだ。
いつかは本当にやりたいことを実行に移すために、とりあえずは資金を稼ぐことが先決と思い込んで、持って生まれた才能や技術を眠らせたままにしている人が世の中にはたくさんいる。
これまでの生きたかを根本的に変えれば、今よりもっと意義深く充実した人生を送れることを心の底では理解しながら、完璧なタイミングが到来するのを待っている人もいる。
しかし、完璧なタイミングなど存在しない。
ただ待っているだけでは何も変わらない。
夢を実現させる時間を遅らせれば遅らせるほど、時間は敵になる。
完璧なタイミングを待ってはいけない。
金はいつでも稼げるが、時間だけは取り戻せないことをくれぐれも忘れないでいただきたい。
感想など:数年前、職場の先輩が冒頭であげたコスタリカの漁師の話を聞かせてくれた。なんとなく心に残っていたので、この本を手に取りました。感想としてはすごく面白かったです。仕事が忙しいと、なんとなく誤った充実感が生まれるものですが、それが常態となって日々を過ごすと、あっという間に人生は終わるんでしょうね。やりたいこともあるんだから、「完璧なタイミング」なんか待たずに行動することが大事だと改めて学びました。良書です。
