ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆☆
覚えておきたい言葉:
あのね、「貧困」と「暴力」って仲良しなんだよ。
貧しさは、人からいろいろなものを奪う。人並みの暮らしとか、子どもにちゃんと教育を受けさせる権利とか、お金が十分にないと諦めなければならないことが次から次に、山ほど、出てくる。それで大人たちの心の中には、やり場のない怒りみたいなものがどんどん、どんどん溜まっていって、自分でもどうしようもなくなったその怒りの矛先は、どうしても弱いほうに、弱いほうにと向かってしまう。
貧しいところでは、だから、子どもが理不尽な暴力の、いちばんの被害者となる。
あのころ、どの家でも、親が子どもを殴っていた。
本気で殴られるんだよ、お父さんとお母さんに。それはしつけとか教育なんてもんじゃなかったと思う。怒りなの。生活のしんどさのあまり、親たちの、どこにぶつけていいのかわからないパンパンに膨れ上がった怒りが、ひどい言葉や本気のこぶしになって子どもたちに飛んでいく。
人は将来に希望が見えなくなると、自分のことをちゃんと大事にしてあげることさえできなくなってしまう。やぶれかぶれで刹那的な楽しさを追い求めるうち、モラルさえなくしてしまう。
自分探しの迷路は、「カネ」という視点を持てば、ぶっちぎれる。
「どうしたら夢がかなうか?」って考えると、ぜんぶを諦めてしまいそうになるけど、そうじゃなくって「どうしたらそれで稼げるか?」って考えてみてごらん。
そうすると、必ず、次の一手が見えてくるものなんだよ。
数え切れないほどの出版社に必死で売り込みをかけるうちに、わたしも、そのことを学んだと思う。
「いいじゃない。お金にならなくても」ってやってるうちは、現実にうまく着地させられない。それこそ、ふわふわした、ただの夢物語で終わっちゃう。
そうじゃなくて「自分はそれでどうやって稼ぐのか?」を本気で考え出したら、やりたいことが現実に、どんどん、近づいてきた。
大人って、自分が働いて得た「カネ」で、ひとつひとつ「自由」を買ってるんだと思う。
単純な話、働いてお金が稼げるようになれば、できることや行動範囲だって広がっていくからね。「大人になる」って、だから楽しいことなんだよ。
ひとつの仕事が次の仕事を呼んで、仕事の道ができていく。
だから、わたしは思うのよ。
「才能」って、人から教えられるもんだって。
いい仕事をすれば、それがまた次の仕事につながって、その繰り返し。ときには自分でも意識的に方向転換しながら、とにかく足を止めないってことが大事。
そうやっているうちに、わたしにも、自分の道がだんだん、ハッキリ見えてきた。
やっぱり「絶対に故郷には帰らない」という気持ちがあったからこそ、最下位だったわたしが、華やかで自分には場違いに思えた東京でがんばり通すことができたんじゃないか。
お金がなくて、ののしりあう両親。借金のために死んでしまった父親。学校をやめさせられて何もかもなくして、いられなくなった田舎。
貧しくて、貧しさが何もかもだめにしてしまうようなあの場所には、何があろうと絶対に帰りたくなかった。
働いても充実感がない、思うような仕事もできないとなると、そういう目の前の現実から逃れるために、女の人が結婚を「避難場所」にすることは、よくあることだと思う。でも、もはや「結婚」が「避難場所」として成立しなくなっているのも、もうひとつの現実だよね。
何より、人の気持ちとカネをあてにするっていうのはさ、「自分なりの次の一手」を打ちつづけることをみずから手放してしまうってことなんだよ。「わたしの人生、それで本当に楽しいものになるのかな」ってことを、女の子にはぜひ考えてみてほしい。
感想など:西原氏の本をちゃんと読んだのは初めてですが、面白かったです。それなりに貧乏もくぐり抜けてきたので共感できます。「大人って、自分が働いて得た『カネ』で、ひとつひとつ『自由』を買ってるんだと思う」という指摘はなるほど確かに、と思いました。
