ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆
覚えておきたい言葉:
今の日本では、お金がジャブジャブになってもモノが流通していない。経済がカネを吸収しない時代なのだ。その理由は三つ。モノをあまり必要としない高齢者の増加(人口分布の変化)、在庫を必要としないジャスト・イン・タイムの生産方式への転換(法人部門の変化)、将来への不安からモノよりカネを握っておこうとする消費者心理(個人部門の変化)である。つまり、経済学が前提としていない状況が、今の日本では三つ重なって起こっているのだ。
海外の農産物が日本にまったく入ってこないような非常事態に陥れば、当然、石油の輸出もストップするだろう。日本の石油備蓄量は180日分しかない。もし石油が止まれば、181日目からはトラクターを動かすこともできなくなるし、灌漑用水をくみ上げるモーターも動かなくなる。もちろんトラックや鉄道も動かなくなるから、国内輸送も不可能だ。要するに石油がなければ国内農業も成り立たないのだから、「国内で米を作っていれば安心だ」という考えは幻想でしかないのである。
食糧安保と言うのなら、海外に土地を買って米を作ればいいわけで、なにも日本で作る必要はない。日本はオーストラリアやブラジルで石炭や鉄鉱石を開発し、インドネシアでもLPG、LNGの開発を行っている。工業分野では海外に資本投下して引き取り権をもらうのは当たり前になっているのだから、農業でも同じことをやればいいのである。
オーストラリアの住宅は2×4に似た工法で、建築費は坪20万円。30坪の家を建てても600万円ですむ。オーストラリアにはサイクロンという超巨大な台風が来るが、それに耐えられるような建物なので非常に丈夫である。2×4の丈夫さは、日本でも阪神・淡路大震災のときに証明されていて、在来工法の家はつぶれても2×4の建物は倒壊せずに生き残った。
しかも、オーストラリアから横浜港まで運ぶ費用は、家一軒分のコンテナーでたった6万4000円である。横浜から工事サイトまで運ぶのに30万から40万かかるという港湾の諸経費と国内輸送の問題はあるが、それでもはるかに安く家が建つ。しかも建築工期は一週間だから、住み替えも楽々だ。土地を「輸入」することで土地が安くなり、海外から住宅も自由に輸入できるようになれば、ロウアーミドルクラスもアッパークラス並みの住環境で暮らせるようになるのである。
高速道路は国民のインフラとして国が整備すべきもので、本来であれば公団化や民営化にはそぐわない。2005年10月に道路公団が民営化されて6つの道路会社と1つの独立行政法人が誕生したが、本当は民営化を取り止めて国の管理下に移し、通行料金は無料にするのが最善の方法である。そして自動車に関する税金を、自動車一台一台のプレートごとに年間一万円ほど課税する「プレート課税」一本にして、今までの公団の借金を10年で返してしまう、というのが私の提案だ。
公団は民営化せずに廃止する。高速道路を無料にしても、将来の建設や修理は国道予算の中でじゅうぶんにやっていける。こうすれば天下りの問題もなくなるし、さらに税金の使われ方を国民が厳しくチェックする制度にすれば、談合も起こらず、道路建設費も維持費も格段に安くすむはずだ。
今、日本がとるべき最善の方法は、所得税をやめて資産課税に切り替えることだ。
流動資産・固定資産の両方の時価を評価し、たとえばそこに1%の税を課すのである。
日本人の一人あたりの金融資産は1144万円(2001年)で、アメリカに次いで世界2位。法人の所有する資産も合わせた日本全体の国民資産は、金融資産が約5593兆円、土地などの非金融資産が約2552兆円で、合計8144兆円(2003年)もある。ここから住宅ローンや企業債務など日本全体の負債額5420兆円を引いた2724兆円が正味資産で、ここに1%課税すれば約27兆円の税収になる。
今の税収は所得税と法人税を合わせても24兆円だから、これだけでその全部を賄っておつりがくる計算だ。資産に関しては収益還元価格法という方式で完全に計算できるから、捕捉率の悪いザルのような所得課税よりもはるかに公正である。また、これで不公平税制の象徴のように言われていた「10、5、3」などの歪みもなくなる。
そして所得税と同時に、企業から徴収している法人税も廃止する。相手が個人でも企業でも、所得には課税しないのが基本的な考え方だ。所得を上げたら祝福してあげなければいけない。稼げば稼ぐほど政府にピンハネされるのでは、お金を稼ぐ意欲がなくなってしまうし、日本で事業をやっていこうという気持ちがなくなってしまうからだ。
所得への課税をやめて資産に課税することには、2つのメリットがある。ひとつは勤労意欲を湧かせ、勤労世代を元気にすること。もうひとつは資産の流動化を促進することである。日本は膨大な金融資産がまったく動かないことが経済の活性化を阻害し、人間の体で言えば血液がうまく循環しない状態になっている。土地は遺産相続でもないかぎり塩漬けになって動かないため、有効な土地活用ができなくないでいる。資産に課税することで、いらない資産は売却せざるをえなくなり、若い人たちにも資産を手にするチャンスが生まれてくるのである。
国内における、各段階で生み出された付加価値の総計がGDPだ。日本のGDPは約500兆円あるから、付加価値税を10%に設定すれば50兆円、5%でも25兆円の税収になる。
これに資産課税分の27兆円を足せば、付加価値税10%なら総税収77兆円、5%で52兆円になるから、私の提案する税制なら、付加価値税5%でも現在の総税収を上回ることになる。
感想など:原発問題に詳しいことから、最近、大前氏の発言や考えに触れる事が多い。そして、いずれも合理的で説得力があるのでたいしたものだと改めて思う。政治家はもう目指さないと言っているが、こういうビジョンをちゃんと持った人が国を率いればいいのなと感じる。いま、選挙でれば結構いい線いくと思うけどな。
ちなみに、古くなりましたが、大前氏の原発動画は↓ だいぶ時間経っていますが。
