『私の叔父さん』


題名:「私の叔父さん」
ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆
覚えておきたい一文:
「もっと早く走って」夕季子は顔を構治の背に
押しつけてさらに何か言ったが、声は風に千切れた。
「何だって?」
「死のうよ。あのダンプに突っこんで」
「馬鹿言うな!」
「兄ちゃん死ぬしかないじゃない。夢壊れたし、
金もないし、女にもてないし、どん底じゃない。
子供ん時世話になったから、あたし一緒に死んで
あげるからさあ」
 風に負けまいと張りあげる大声は冗談なのか。
街は夕暮れ、向かう西の空には都会の塵にまみれた
夕陽がとろんと落ちかけている。
風はさらに冷たく、懐も胸も空っぽになった中へと、
ダンプの燈とともに、子供の頃こんな風に一緒に
自転車に乗った思い出が構治のなかにぼんやりと
滲みこんできて、一瞬、本当に一瞬だけ、
このまま夕季子と死ぬのも悪くないなと思い、
同時にブレーキをかけた。
ひとことコメント:
先日取り合げた、「恋文」の中に入っていた
短編「私の叔父さん」を読みました。
本の最後に入っていたこの話(最後まで読んで
良かった)、胸に残りました。
雨の土曜日、ひっそり読むのに適した物語。

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