『閉じこもるインターネット』

ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆
覚えておきたい言葉(引用):
パーソナライゼーションのフィルターは目に見えない自動プロパガンダ装置のようなものだ。これを放任すると、我々は自らの考えで自分を洗脳し、なじみのあるものばかりを欲しがるようになる。

少人数の編集者が実験をにぎり、なにが重要であるのかを一方的に決めていた昔に戻そうと言っているわけではない。ただ、あまりに多くの重大なニュース(ルワンダにおける大量虐殺)が見逃され、あまりに多くのどうでもいいニュースがトップページに掲載されている。だからといって、このアプローチを完全に捨てるべきとも思わない。(米の)ヤフーニュースを見るとこの中間にも道がありそうに思える。編集者がリードする旧来の方式とアルゴリズムによるパーソナライゼーションを組み合わせる方法だ。特に重要なニュースはアクセスした全員に提示される。一部のユーザーにのみ表示されるニュースもある。クリックデータを解析して記事の成績を求める作業にもかなりの時間を費やしているが、ヤフーの編集チームはそれだけを気にしているわけではない。ヤフーニュースの社員は、わたしにこう語ってくれた。
「うちの編集者は、アクセスした人たちを方向性を持ったデータの流れとして見るのではなく、それぞれに興味関心を持った人間として見ています。データも大好きですが、でもそのデータは、それがいったいなにを意味するのかを考える人間がフィルタリングしているのです。読者にとって重要だと思ったニュースなのに意外と成績が悪かったのはなぜだ? このニュースをもっと多くの人に届けるためにはどうすればいいのだ? そういう感じです」

ニューヨークタイムズでは、記者もブロガーも、自分の記事を何人がクリックしたのか知ることができない。これは規則ではなく新聞社としての哲学だ。つまり、報道をおこなう新聞であるとは、十分に検討された編集判断をメリットとして読者に届けることを意味するからだ。ニューヨークタイムズの編集者、ビル・ケラーはこう述べている。「我々の場合、数値によって職務や力点を変えない。読者はニューヨークタイムズの判断を求めているのであり、大衆の判断を求めているのではないと信じているからだ。我々は『アイドル』ではないのだから」

米国の大手メディアは戦争報道が少なすぎると左派はよく批判する。しかし、わたしを含む多数の人にとって、アフガニスタンの記事は読んでもおもしくない。複雑に絡みあってわかりにくく、気がめいる話が多いからだ。
しかし、この記事は読むべきというのがニューヨークタイムズの編集判断であり、トラフィックは最低クラスだろうにアフガニスタンの記事はトップページに置かれているし、だからこそ、わたしも読みつづけている(わたしの意向をニューヨークタイムズが却下しているわけではない。わたしの想像力を刺激してくれたものをクリックしたいという気持ちより、世界について知っておきたいという気持ちのほうを強く支持しているだけである)。人気や個人的な関連性よりも重要性に重きをおくメディアのほうが有用な場合もあるーーいや、必要な場合さえもあるのだ。

アマゾンはあらゆる機会をとらえてユーザーからデータを集めようとする。たとえばキンドルで本を読むと、どこをハイライトしたのか、どのページを読んだのか、また、通読したのか行ったり来たりしたのかといった情報がアマゾンのサーバーに送られ、次に購入する本の予測に用いられる。キンドルを使い、ビーチで電子書籍を読んだ翌日にログインすると、読んだものに応じてサイトが微妙にカスタマイズされる。

グーグルとしては、なるべく早い時期に例の検索窓を時代遅れにしたいとバイスプレジデントのマリッサ・メイヤーは言う。CEOのエリック・シュミットも「次の段階として、検索が自動的におこなわれるようにしたい」と2010年に語っている。「街を歩いている間、スマートフォンが検索をくり返し、『こんなことがあるよ』『こんなことがあるよ』『こんなことがあるよ』と教えてくれればいいと思うのです」。つまり、人が検索をおこなう前になにを調べたいのか、スマートフォンがわかるようになって欲しいというのだ。

完全なる関連性の追求と創造性を醸成する偶然に発見する能力とは、向きが正反対なのだ。「これが好きなら、こちらも好きなはず」と言ってくれるのは便利だが、創意工夫の源とはなりえない。独創性はかけ離れたアイデアを並べることから生まれるのに対し、関連性はよく似たアイデアをみつけることだからだ。

感想など:読者が興味を持ちそうな情報を流す傾向が強まっているので、この本が鳴らす警鐘は「なるほど」と思うところが多かった。便利さと多様性の共存が鍵。

タイトルとURLをコピーしました