『日本はなぜ貧しい人が多いのか』


著者:原田泰
ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆☆
覚えておきたい一文:

日本の公的扶助支出額の国内総生産(GDP)に占める比率を見ると、わずか0.3%であり、経済協力開発機構の平均(2.4%)の約8分の1と極めて小さい。(中略)日本の公的扶助の支出総額は小さいが、公的扶助を受けている人、1人あたりへの支出額は、先進国の中では大きいのではないかと予想できる。

要するに、日本の1人あたりの公的扶助給付額は主要先進国の中で際立って高いが、公的扶助を実際に与えられている人は少ないということになる。これは極めて奇妙な制度である。日本に貧しい人が少ないわけではない。同志社大学の橘木俊詔教授は、生活保護水準以下の所得で暮らしている人は人口の13%と推計している。ところが、実際に生活保護を受けている人はわずか0.7%である。

現在の日本の年金給付額は世界一高くて、児童手当は先進国の中で一番低い。つまりリタイアした高齢者の老後には手厚く、将来を担う育児には手薄な構造だ。

年金支給額と支給年限を3割ずつカットすれば、年金支給額は(1-0.3)×(1-0.3)=0.49であるから半分になる。年金保険料の引き上げは必要なくなるどころか、引下げも可能になり、人口減少社会の最大の問題は解決する。そして、年金をカットした後でも、日本の年金は世界一のレベルにある。

日本が金融緩和に躊躇しているのであれば、円高になるのは当然だ。為替レートとは、各国マネーの交換比率のことであり、日本のマネーが増えていないのに、アメリカが増えれば円高になる。

人口減少には、すでにある富を少数の人々で分配できるために豊かになれる面と、「規模の経済」が失われて貧しくなる面との両面がある。しかし、「規模の経済」は自由の貿易から生み出される。大抵の商品には、効率的に作るための最小限の規模というものがある。したがって、小さな国が多くの商品を効率的に生産することはできない。しかし、小さな国でも、少ない種類の商品を大量に作って、別のものと交換すれば、多数のものを効率よく作っているのと同じになる。また、国内の生産性の低い産業を、輸入に置き換えることもできる。人口の少ないシンガポールや香港は、日本以上に豊かである。人口1000万人に満たない国でも、自由な貿易を確保できていれば、規模の経済は保たれる。規模の経済が失われないなかで、人口減少は人々を豊かにする。

国全体の経済力が大きければ、国際社会での発言力が高まるという意見がある。俗っぽく言えば、幅が利くということだ。では、幅を利かせてどうするのか。世界各地の事件に口を出し、自分が考える正義を振りかざして、煙たがられるだけかもしれない。それよりも、国民一人一人が自由で、豊かで、大切にされる国であることの方が、よほど世界の人々の憧れを集めるだろう。そういう国になった方がずっと良いと私は思う。

ひとことコメント:
仕事が忙しかったのと、読みたい本が山積していたので、図書館で何度も借り直していた本。難しい部分もあるのですが、全体的にとても面白かったです。数字でちゃんと根拠を示して説明されているので、納得感も高いです。上に、年金についての引用がありますが、3割カットというと厳しく聞こえますが、これはやれば制度がかなり安定するようです。でも、高齢者の人口が増えれば、その分、改革は難しくなるから(高齢者は選挙で制度維持を目指す政党に入れるので)、解決しないのかな。やれやれ。

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