『ゲーテの警告』

ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆
覚えておきたい言葉:

 B層とは、知的程度がそれほど高くなく、A層(財界勝ち組企業・大学教授・マスメディア)から投下されたメッセージをそのまま鵜呑みにしてしまう層です。企画書にあるように、「具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層」ですね。
 B層は自分の頭で考えるのではなく、A層から結論を与えられるのを待っている。逆にA層にとって、B層は最大の顧客なので、B層向けコンテンツを中心につくるようになります。
 その結果、A層とB層の間で増幅作用が発生し、巨大なB層エネルギーが誕生する。そしてこれが社会全体をのみ込んでしまった状態がわが国の現在です。
(中略)
 小泉純一郎は、このB層にターゲットを絞ることで、圧倒的な支持を得ました。
 ところが、続く安倍内閣は短命に終わります。退陣の直接的な理由は、安倍晋三の健康問題でしたが、相次ぐ閣僚の不祥事が大きな影響を与えたことは間違いありません。
 しかし一番の問題は、安倍晋三の視線がIQの高いA層とC層に向けられていたことでしょう。
 彼は「戦後レジームからの脱却」を唱え、具体的な法改正を進めていきました。現行憲法の不備を指摘し、安全保障の枠組みを大きく見直すべきだと主張した。
 しかし、B層の支持は得られませんでした。
「戦後レジームからの脱却」と言ったとき、B層は戦後民主主義幻想の崩壊を怖れたのではなく、「レジーム」の意味がわからなかったのです。

 オルテガが言うように、大衆とは「他の人々と同一であると感ずることに喜びを見出しているすべての人」なのでB層は多数派に接近していく。

 かつて民主党に酷似した政党が存在しました。
 彼らは官僚批判を繰り返し、政治主導を訴えます。思い切った少子化対策を断行し、社会福祉の拡充を国民に約束しました。環境問題や健康問題に積極的に取り組み、各種法制度を整えます。高速道路の無料化も実現しました。
 ヒトラー率いる国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)は、こうして「民意」に迎合することで権力を掌握します。
 ヒトラーは首相に就任すると、国会改革を断行、全権委任法により党に権力を一元化します。さらには、高等教育の無償化を打ち出し、失業対策として大量の国債を発行しました。
 こうしてナチスは、国民投票・住民投票(民主主義)を繰り返すことで急拡大したわけです。
 これが20世紀の教訓です。
 要するに、政治に直接民意を反映させてはいけないのです。政治家がやるべきことは「民主主義の原点」から、社会・共同体を守ることです。そして自由な言論の場である議会を守り、プロの見地から立法を行うことです。増税や社会福祉が必要ならやればいいし、不必要ならやらなければいい。それはプロとして判断すべきことです。
 民意を尊重する医者がいたら嫌でしょう。手術が必要かどうかは、患者ではなくプロである医者が決めること。これは大事なことなので強調しておきますが、本来の民主主義においては、「代表はプロではない」ということが前提となります。だから狂信的な民主主義者は、くじ引きや無作為抽出により「代表」を選ぶことを唱えるのです。

感想など:ちょっと前、会社の上司が「仕事柄、この本は読んでおいた方がいいかもね。まだ読んでないけど」と言っていたので、読みました。メディアがポピュリズム満載の情報を大衆に発信することの罪を考えさせられる一冊でした。でも、ポピュリズムを完全に排すとほとんど誰もその情報に見向きもせず、結果伝わらないので難しいところですね。

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