『資本主義はなぜ自壊したのか』と『恋文』

題名:「資本主義はなぜ自壊したのか」
ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆
覚えておきたい一文:
「かつて、資本主義が狭い国境に押し込められて
いたときには、資本主義は(ヒト・モノ・カネの)
高低差を徹底期に利用するというわけには
いかなかった。すでに述べたことだが、
たとえば賃金一つをとってみても、
ローカルな資本主義においては資本家が
労働者を徹底的に搾取することは、
労使双方の共倒れを招いてしまう。
地域に限定されたマーケットにおいては、
生産と消費が一致しているのだから、
消費を拡大するためには賃金をそれなりに
上げないと、企業の収益も増えない。
マルクス経済学では『資本主義は労働者を搾取、
収奪するメカニズムだ』とされていたわけだが、
グローバル経済以前の資本主義では、
それは間違いであった。
むしろ資本主義にとっては、過度な搾取や収奪は
むしろマイナスに働く。適切な再配分を行うこと
のほうが、資本主義の成長にとっては有利で
あったのである。
しかし、グローバル資本主義の時代に入ると、
資本主義はその様相をすっかり変えてしまったと
言えるだろう。グローバル資本主義はつねに
高低差を探し求め、作り出し、それ自身を
維持しようとするようになった。かくして、
グローバル資本主義は世界中で格差を拡大し、
貧困層を作り出していくようになったのである」
「医療、そして教育サービスなどの公的サービス分野で
改革を行うときには、それがどういう社会的結果を
もたらすのかについて十分な検討が必要であり、
たんに民営化・株式会社化すれば効率が上がるといった
議論だけで間違った構造改革を推進してしまうことは
厳に慎まなくてはならない。
 ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマンは、
西側諸国におけるお医療保険の国際比較を行っているが、
アメリカ国民の負担している医療保険費は、
実はカナダ、ドイツ、フランス、イギリスといった
公的保険を有している国の約2倍、あるいはそれ以上に
なっている。民営化し、市場原理を導入すれば、
国民負担が減るというのは、一種の神話、
伝説なのである。しかも、これらの各国に比べると、
アメリカの平均寿命はどこよりも低い」
「さて、『年金財源を消費税で』という提案をしたときに、
かならず出てくる反論がある。
 それは「消費税には逆進性がある」という議論である。
 消費税には大いなる利点があって、どんな金持ちでも
消費のたびに支払うことになるから脱税や節税ができない。
所得税ならばさまざまな節税テクニックがあるし、
リスクを覚悟で脱税もできる。しかし、消費税はそれが
利かないのである。だが、その一方で消費税は貧しい人にも
一律に課税される。
 かりに消費税をヨーロッパ並みの20%に上げたとしたら、
年収200万円の人の消費税負担は(すべての収入を消費に
回したとして)、40万円にもなる。
つまり、手取りは160万円しかない。一方、年収10億の人は
2億払うかもしれないが、それでも8億残る。
これでは貧しい人のほうが重税感があるというわけである。
(中略)
 そこで私が提唱したいのが、「還付金付き消費税」なので
ある。
 たとえば、消費税20%になったとき、年収200万円の
人たちの消費税負担は40万円となるわけだが、
この税率アップと同時に「全国民に均しく毎年40万円ずつ
還付する」という制度を導入するのである。
 そうすると、年収200万円の人の実質的な消費税負担は
ゼロになる。さらに、それ以下の所得の人、たとえば、
年間に消費するお金が100万円の人は20万円の消費税を
支払うが、一方で40万円の還付を受けるから、
実質的には20万円の所得補填を受けることになる。
 もちろん還付の恩恵を受けるのは年収200万円以下の
人ばかりではない。たとえば、年間の消費が400万円の
人は消費税80万円、還付が40万円なので、
実質の消費税率半分の10%にとどまる。
年間消費額が1000万円の人は、消費税200万円に対して
還付金が40万円なので、差し引き160万円の消費税で
税率は16%になる。このようにすれば、
消費額の多い人の消費税率は徐々に上がっていくから、
消費税の最大の欠点である逆進性は解消されることに
なるわけである」

ひとことコメント:
職場の人(ベーシックインカムの本を
教えてくれた人)から借りて読んだ本。
上記の最後に引用した、
「還付金付き消費税」導入は、
未納や宙に浮く年金問題の解決、
急激に進む所得格差を埋める手段として、
すごく魅力的に思いました。
勉強になりました。

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題名:「恋文」
ステータス:前半の短編を読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆
覚えておきたい一文:
「虫のいいこと承知で言うけど惚れるって、
相手に一番好きなことをやらせてやりたいっていう
気持ちのことじゃないかな。本当に惚れるって
そういうことだよ」
ひとことコメント:
新聞の書評欄で取り上げられていて、
なんとなく気になったので読んでみました。
読みやすい短編集で、人情の機微がつまっています。

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