『十字軍物語 2』


ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆☆
覚えておきたい言葉:

 イスラム教徒にとっての重要な聖地は、第一にメッカ、次いで、予言者マホメッドの死地でもあるメディナ、そしてそれに次ぐのが、マホメッドが天に昇って行ったと伝えられている岩が奉られている、イェルサレムである。
 一方、キリスト教にとっての重要な聖地となると、イエス・キリストが生き、死に、復活した地であるイェルサレムが第一に来て、次いでは、イエスが後継者に指名した聖ペテロの殉教の地であるローマが来る。第三は、イベリア半島北部にあるサンチャゴ・デ・コンポステーラ。この聖地を異教徒の手に渡したくない一心で始まった対イスラムの軍事行動が、1492年になってようやく完了することになる、スペイン人による「再征服(レコンキスタ)」に進展していくのである。

(前略)騎士団でも宗教騎士団であることの特色の第四は、世俗の騎士ならばその地方の封建領主を主人にあおぐのが普通だったのに対し、宗教騎士団となると、王や領主の配下にはならない。武器を持って闘おうと身は修道士である以上、修道院がその地方の司教の下に位置せずに直接にローマ法王の管轄下にあるのと同様に、宗教騎士団も、諸候や王から独立した存在になる。
 つまり「聖堂(テンプル)騎士団」は、イェルサレム王にもアンティオキア公にもトリポリ伯にもエデッサ伯にも、またイェルサレムの総主教の下にさえも属さない、シリア・パレスティーナの十字軍国家内に生まれた戦士集団ということになるのだった。

 十字軍時代よりは二百年後は後の話になるが、ドイツの君候の一人であったブルテンベルグ伯は、これから聖地巡礼に発とうとしていたドメニコ会の修道士シュミットに向かって、次のように言ったという。
「世の中には、人に推めるべきか、それとも推めないほうがよいか迷う事柄が三つある。第一に結婚、第二は戦争、そして第三は聖地巡礼だ」
 いずれも、先行き不明ゆえに危険多し、という点では共通している。

 サラディンはやはり、イスラム教徒たちが賞讃するのも当然な、戦略の天才であったのだった。しかし、このイスラム世界きっての英雄が、今なおあの世界ではことあるごとに冷遇されている、少数民族のクルド人であったことを、その後のイスラム教徒たちは知っているのだろうか、と思ってしまう。
 一方、中近東からは遠く離れたヨーロッパでは、サラディンによるイェルサレム奪還の知らせはまたたくまに広まり、ヨーロッパに住むキリスト教徒たちに、言いようもない深刻な打撃を与えていたのである。
 エデッサの陥落とは、話がちがった。92年前に十字軍を起こしたときのそもそもの目標であった、聖都イェルサレムを奪い返されてしまったのである。今度ばかりは、エデッサを失ったショックで始まった第二次十字軍のように、聖ベルナールのような扇動者は必要ではなかった。ヨーロッパ中が、自発的に起き上がったのである。
 ドイツからは、赤ひげの綽名で知られた、神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ一世。
 フランスからは、王であるフィリップ・オーギュスト。
 そしてイギリスからは、イスラム相手の獅子奮迅の働きによって「獅子心王」と呼ばれることになる、英国王になったばかりのリチャード一世。
 十字軍の歴史上、「花の第三次」と言われる第三次十字軍が、ヨーロッパを発って続々と中近東に向かい始める。受けて起つのは、今度はサラディンのほうになるのであった。

 
感想など:いま一番読むのを楽しみにしているシリーズ。2巻も面白かった。キリスト側、イスラム側それぞに聡明な王、愚かな王がでてきて、複雑に絡み合いながら歴史を紡いでいく様子がよく分かります。やっぱり塩野氏の戦史ものはピカイチです。ただ平時も扱っている「ローマ人の物語」(長い)も半分くらいまで読んでいるので、これを機に読了を目指したい。
あと、やっぱりいつかイェルサレムに行きたいなと思いました。歴史が分かったので見方も違うだろうし。イサム・ノグチの建築もあるので、いつか行かねば。

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