『ナニカアル』


ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆
覚えておきたい言葉:

 叔父は人に説教したがるような人間ではありませんでしたが、薔薇の話をした直後には必ず、「よく冬の時代などと言うけれども、人間にも死んだように休眠する時期が必要なのだ。でないと、再生できないよ」と付け加えていたのを懐かしく思い出します。

 こうして美しい故国にどっぷり浸りながらも、またぞろどこかに行って放浪したいような気持ちも湧き上がる。たった一人で感じるひりひりするような孤独や、どうなるかわからない不安に身を焦がしたい自分がいるのだ。

 ここだけの話、聖戦だろうと何だろうと、戦争の本質は同じだ。卑劣で残虐で愚かしい、人間の悪を全開させるものだ。

 一抹の雲もない秋の昼の山々
 七彩の青春に火照る木の間よ
 神々も欠伸し給ふ。
 大地を埋め尽くす静寂の落葉
 眼閉ぢ何もおもはず
 吾額に哀しみを掬ふなり
 悠々と来り無限の彼方へ
 彼方へ去りゆく秋の悲愁よ。
 刈草の黄なるまた
 紅の畠野の花々
 疲労と成熟と
 なにかある……
 私はいま生きてゐる。

感想など:出張で関西に帰省した際、親戚の家で自分の家族の過去をいろいろ聞いてみた。早くに亡くしていたこともあって、あんまり知らないことが以前から気になっていたので。で、話の中で祖母が若いころ、作家の家でお手伝いさんみたいな仕事をしていたことを知り、その作家先生は林芙美子とも交流があったと聞いた。林芙美子は、以前からなんとなく気になる作家だったので、ちょっと驚きました。で、彼女が戦争前後にどんな生活を送っていたかを描いたこの本を読んでみました。太平洋地域に従軍記者として派遣される話があるのですが、そういえば祖母も満州やシンガポールに行っていた時期があるそうなので、「こんな生活だったのかなぁと」と想像しながら読みました。なんか不思議な縁で読んだ本でしたが、林芙美子にはナニカアル。

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