ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆☆
雑感:ビジネス書の中で注目されているものなので、読んでみたら確かにおもしろい。あまりにありふれているから、みんな見過ごしている経済データーをきちんと分析して、この国のデフレの正体を解き明かしていきます。
首都圏においてすら、生産年齢人口はもう減り始めている。他方で日本中で高齢者が増加しているが、特に高度経済成長期に若者を集めた首都圏のような地域ほど増加のペースは急だ。(中略)しかしこの事実は、「100年に1度の不況」の大合唱の下でほとんど無視されています。景気対策をしてこの波を乗り切りさえすれば、人口構造がどう成熟化しようとも経済は再び成長する、これが日本の経済関係者ほとんどの信念であるようにすら見えます。
ですが、景気の波と関係なく襲ってくる「生産年齢人口の波」を、いつまでも無視していいのでしょうか。最近出てきた用語で言えば、「人口ボーナス(生産年齢人口が年々増加している状態)」と「人口オーナス(生産年齢人口が減少に転じ、高齢者が急増している状態)」と呼ばれているものですが、その影響たるや、景気の波を簡単に打ち消してしまう威力がありますし、景気循環に対処するための各種方策はこれにはまったく通用しません。
生産年齢人口=消費者人口の減少→供給能力過剰→在庫積み上がりと価格競争激化→在庫の時価の低下(在庫が腐る)という現象です。その結果発生した消費者余剰は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定性の高い貯蓄(=将来の医療福祉負担の先買いという一種のデリバティブ購入)という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません。腐った在庫は最終的に叩き売られて企業収益を下げます。
うーん、すごくわかりやすく物価下落の理由を指摘していますね。さらに本の後半では、人口減少でますます深刻化するであろう内需減退への対処法を示しています。高齢者から若者への所得移転、若者雇用の促進、観光客増の取り組みなど、どれもなるほどなるほど、と思いましたが、女性の雇用増が一番無理なくできることで、効果も高いと思いました。
日本の女性は45%しか有償労働をしていません。正社員だけではありません、ハケンでもパートでもとにかく1週間に1時間以上、お金をもらって働いた人をすべて合計しても、女性の2人に1人に満たないのです。つまり今の日本では、総人口の3割近い3500万人もの女性が、給料の出ない専業主婦や学生や家事手伝いをしています。その中には高齢者の方も多いわけですが、生産年齢人口の専業主婦だけを取り出しても1200万人もいらっしゃいます。
ところで今退職年代に入りつつある団塊世代のうち、有償労働をしていたのは500万人余りです。ということは、生産年齢人口の専業主婦1200万人のうちの4割が、(正社員であればもちろんいいのですが臨時採用でもハケンでもパートでもいいので)とにかく1時間以上お金をもらって働いてくだされば、団塊世代の退職が雇用減・所得減という形で日本経済に与えるマイナスインパクトは、なかったことになってしまうのです。
特に心配なのは団塊世代が担ってきた分の内需の減退ですが、これだけの数の女性が新たに給料を得、その分我慢せずにモノやサービスを買ってくだされば、実はお釣りが来て内需を支えることが可能です。団塊世代のオジサマよりも、女性の方が買いたいものが多いですから。<中略>日本の内需は革命的に向上します。その分企業の売上は増え、女性の雇用は(もちろん若者の雇用も)さらに増やすことが可能でしょう。
私は、「外国人労働者導入は必然だ」と主張する議論を読むたびにいつも思うのです。あなたの目の前に、教育水準が高くて、就職経験が豊富で、能力も高い日本人女性がこれだけいるのに、どうして彼女らを使おうとせずに、先に外国人を連れてこようという発想になるのか。日本女性が働くだけで、家計所得が増えて、税収が増えて、年金も安定する。そもそも女の人が自分で稼いでお金を持っていただいた方が、モノも売れるのです。車だって洋服だって日経新聞だって、働く女性が増えれば今以上に売れることは確実です。
女性が働きやすくなるように、子どもを預かる施設の充実とか復職制度の拡充とかに取り組んでもらいたいものです。そうすれば出生率も上がっていくだろうし。ふーむ、勉強になった。経済データーはちゃんと見ないといけないなぁと感じさせる1冊です。
