『ジェノサイド』

ステータス:読了
評価(最高が5つ星):☆☆☆☆☆
覚えておきたい言葉(ネタバレあり):

多分、自分が子供でいられる時代は終わったのだろうと研人は考えた。昨日までは、自分は子供だと思っていたのに。親というのは、自分の死をもって、最後の、そして最大の教育を子供に施すのだろう。良くも悪くも。

フローレス原人に限らず、ネアンデルタール人にしても北京原人にしても、絶滅してしまった人類種には、最後の1人となった個体がいたはずだった。その人には意識があり、感情があり、自分の置かれた状況を理解する能力も備わっていた。彼か、あるいは彼女は、ある時、気づいたはずだ。自分のいる世界をいくら見渡しても、もう1人の仲間も残っていないと。そして自分が救いのない、絶対的な孤独に追いやられてしまったのだと。家族や友人だけでなく、生物種という仲間全員が死に絶えたと悟った時、どれほどの寂しさや絶望感に襲われたことだろう。

お父さんは誠実な科学者だった。君が今、懸命に薬を作ろうとしているのが何よりの証拠だ。その情熱は、父親から息子へと受け継がれたものだ。

ネオナチや白人至上主義など、己の暴力衝動を政治思想に仮託する似非右翼には、共通の心性がある。自尊心の歪んだ発露である。彼らは生育歴などの問題から自己を直接肯定することができないため、自分の所属する集団を全肯定した上で、その集団の成員である自分は素晴らしいという論法を取る。

『最後に、父さんからお前に訊きたいことがある。
父さんが頼んだ研究を、お前はやり遂げたか?
お前は子供たちの命を救ったか?
お前は人類の役に立ったか?
未知の世界への挑戦を、心置きなく楽しんだか?
自然はお前だけに、とびきりの笑顔を見せてくれたか?
そしてお前は、どんな芸術もかなわないほどの感動を味わったか?
父さんは知っている。お前はやり遂げたことを。
そんな我が息子を、父さんは誇りに思う。どうかこれかも迷うことなく、薬学の道を進んで行ってくれ。
それではお別れだ。
さようなら、研人。
良い科学者になれ。 父より』

感想など:普段は図書館で本を予約して読書してますが、最近、予約した本がなかなか届かないことが多いので、久しぶりに購入。いろんなランキングや書評で評判いいので、気になっていました。タイトルからはちょっと俗っぽい印象を受けますが、この話は一級品でした。学生時代、貪るように読書していた感じを少し思い出しました。本の帯に、「590ページという長さをまったく意識させない大傑作!(中略)読者諸賢よ、晩飯を抜いてでも買って読むべし」(永江朗氏)との紹介に従い、晩飯前に本屋で買いました。まぁ、晩飯は軽く食べましたが。良書。

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