『トルーマン・カポーティ』

「自分のことを話すのは、いやなんだけど。でも、二年後に私の母も自殺したの。そのときトルーマンが電話をくれた。『知ってると思うけど、ニーナも自殺だったんだ』といってね。 私は『ええ、知ってたわ』と答えた。私たちはそれ以上何も言えなかった。大恐慌のさなかに育ち、戦争を生き延びた人は人生が虹色なんて思わないでしょうけど、どんな不幸よりも耐えがたいのは母親が自殺した子供の立場よ。何が辛いとって、 自殺した人がどんなにすてきだったかという思い出を 誰にも話せないことだわ。友達にさえ話せない。みんな、すごく気を遣ってくれて、そのことに触れないようにし、励まそうと努めてくれる。それで、私はかえって落ちこんでしまった。乗り越えるには二十年ほどかかったの。トルーマンは少しも取り乱さなかったけれど、でも彼の生涯であのことがけっして癒されない大きな傷になったことはたしかだと思う。なすすべがない。どんな人でもなすすべがない。せいぜい、防音装置完備の部屋を借りて、山のような皿を持ちこみ、壁に投げつけて壊し、大声でわめいたり叫んだりする。それをまる一年、毎日続けたら何とかなるかもしれないけど。……」『トルーマン・カポーティ』(ジョージ・プリンプトン著)より

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